2012年6月6日水曜日

I like chopin



こんな昼間の雨の日 嫌いじゃない

そして 白昼夢のように 思い出す人がいる


昔々、夜の街で出会った

美しく華やかで蝶のような女性だった

いくつだったのかも名前が本名だったのかも定かではない

濃い目の化粧の瞳の奥に常に哀しみを帯びていた人だった


余計な詮索もしない、まだ大人になりきれてないような私を

彼女は好んで連れ歩いた


ある日呼び出された先はホテルの一室だった

しばらくここに住んでいるらしかった

そこは生活感のない彼女にとても似合っていた

たぶん、彼女は誰かに追われているようだった

彼女には好きな人がいて 彼の話をしている時はとても可愛らしかった

今思い返すと その彼との話をできるのが私しかいなかったのかもしれない


程なくして、彼女からの連絡の頻度が増していった

無理な時間にも連絡がきて強引な態度に変わっていった

まだ若かった私は少し怖くなって距離を置くようになった

たぶん彼女は病んでいたから

私なんかにはどうすることもできない現実だと知りながらも

彼女は助けを求めていたのだと思う




たくさんのレコードを集めていた彼女が

私のために作ってくれたMIXテープ

最後の曲は [ I like chopin ] 


昼間の 少し物悲しい雨の日

憂いを帯びた彼女の横顔と この曲が

おぼろげな記憶とともに 頭を掠める



0 件のコメント:

コメントを投稿