こんな昼間の雨の日 嫌いじゃない
そして 白昼夢のように 思い出す人がいる
昔々、夜の街で出会った
美しく華やかで蝶のような女性だった
いくつだったのかも名前が本名だったのかも定かではない
濃い目の化粧の瞳の奥に常に哀しみを帯びていた人だった
余計な詮索もしない、まだ大人になりきれてないような私を
彼女は好んで連れ歩いた
ある日呼び出された先はホテルの一室だった
しばらくここに住んでいるらしかった
そこは生活感のない彼女にとても似合っていた
たぶん、彼女は誰かに追われているようだった
彼女には好きな人がいて 彼の話をしている時はとても可愛らしかった
今思い返すと その彼との話をできるのが私しかいなかったのかもしれない
程なくして、彼女からの連絡の頻度が増していった
無理な時間にも連絡がきて強引な態度に変わっていった
まだ若かった私は少し怖くなって距離を置くようになった
たぶん彼女は病んでいたから
私なんかにはどうすることもできない現実だと知りながらも
彼女は助けを求めていたのだと思う
たくさんのレコードを集めていた彼女が
私のために作ってくれたMIXテープ
最後の曲は [ I like chopin ]
昼間の 少し物悲しい雨の日
憂いを帯びた彼女の横顔と この曲が
おぼろげな記憶とともに 頭を掠める
0 件のコメント:
コメントを投稿